FOTOCAMERE ITALIANE-GAMMA

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Gamma - Rome - Gamma s.r.l.

ガンマ I型 ビクトールガンマ55mm f3.5
GAMMA mod.I VICTOR GAMMA 55mm f3.5

Gamma I

 1947年にデビューして、ちょっとだけ生産されて終わったイタ公気質満載の独創的なレンジファインダーカメラ。専用バヨネットマウントで、交換レンズの点で困ったちゃんですが、II型・III型ではLマウントに改められてま。このI型は最初期のもので、101番から300番頃までがこれに当てはまるそうで、特徴は距離計調節用の閉じ蓋ネジが付いていること、フィルム送り確認用の回転する円盤が外に付いていないことなどが特徴です。中期のものはその円盤が付き、後期のものは距離計調節ネジが省略されちゃいました。
 で、このカメラで最も気になるシャッターですが、幕には湾曲した2枚の金属板が使われたフォーカルプレーンで、グリップらしき前面の突起はそのシャッター幕(板じゃん)を納めるための逃げとして作られたものなんですよ。
 シャッターのショックはさすがに強いので、「あれ?ワテは一眼レフを使ってるのかい?」と小一時間考えたくなります。
 巻き戻し機構はなく、ダブルマガジンで用いますが、現在ではAP製のプラスチックカートリッジがこれにぴったりと納まるので、ナイスです。最後まで撮り切ったら、エキザクタ・ヴァレックスのようにボディに内蔵されたフィルムカッターでフィルムを切り離し、そのまま巻き上げてしまえば良いわけ。
 レンズは「コリストカ」ネームのガリレオ製で、ビクトール・ガンマ55mm f3.5の沈胴テッサー型です。ちなみにコリストカというネームですが、この会社は1886年にFrancesco Koristkaによってミラノに興されたそうです。でも晩年はガリレオ傘下に入ったようで、ガンマやクリスタルの標準レンズを最後にコリストカネームは消えちゃいました。古い蛇腹カメラなどに供給されていたレンズにも同銘柄のものが結構見られるんですよ。
 裏蓋は写真の通り前面の突起の脇から後ろがすっぽりと外れ、フィルム圧板も後のローライ35のようにボディ側に蝶番で取り付けられた板を閉じてから裏蓋で押さえ付けるようになってます。フィルムの巻き上げはライカとは逆の反時計回り。アフォということです。時たま無理に時計回りに回そうとして「あれっ? あっ、そうだった」となることがあります。(←自分がアフォ)
 ところで、こんな奇抜な発想のカメラですから、売り上げは必ずしも良かったとは言えないようで、このI型の生産台数は700台未満と言われてますが、やっぱ専用のバヨネットマウントでは、なかなかユーザーをつかめなかったんでしょうねぇ。
 ちなみに、Gamma S.r.l.は46年にシルヴァーノとジュリアーノのロッシ兄弟によってローマに興されたメーカーで、この独創的な機構のフォーカルプレーン機は51年までのたった4年間しか生産されませんでした。やはり、食って行くには夢を追いかけてばかりでは厳しかったようで、その後は売りやすく儲けも出やすいレンズシャッター機へと一気に方向転換しちゃいます。

This camera is the original range finder camera that was produced only a minority from 1947. The Gamma mod.I is exclusive use bayonet mount, so there is an interchangeable lens hardly. However, the mod.II /III were changed into the Leica screw mount.
The most characteristic system in this camera is a shutter. Two curved sheets of metal plates are used to the shutter curtain. The protrusion of the front like the grip is the edge of a way as the shutter curtain. The shock of the shutter is big.
There is not a roll return system, so must use double magazine. The plastic cartridge made of the "AP" is able to store in this. The film cutter like the Exakta VX is furnished. Use this cutter when film ends.
The shutter speed of the Gamma mod.I is B. 1/20〜1/1000 seconds. The Gamma mod.II/III was added 1〜1/10 seconds. Even the synchronize point of contact was added to the final model of Gamma mod.III.

ガンマ I型 距離計なし ビクトールガンマ55mm f3.5
GAMMA mod.I no rangefinder type VICTOR GAMMA 55mm f3.5

 で、こっちはな〜んも付いていない正真正銘のI型。軍艦部にmod.Iと銘打ってます。ですんで、日本でさんざん言われていたI型のことですが、距離計付きバヨネットマウントのスローなしI型モデルは、正確にはII型になるはずなんですね。Marcoさんは実際そう呼んでいます。でも、発売はどっちが先なのか良く分からんです。ここらへんはおイタさんの真骨頂とも言うべきいい加減さで、ちと何が何だか分からん場合が多いですが、ま、そこは気にしたらいけません。でも、一応見たところですが、機構的には上記距離計モデルと変わらないようですんで、多分ほぼ同時期に併売されたものなのでしょうねー。ただし、これはたったの12台しか世に出ていないもので、試作品と言っても良いでしょう。

Gamma Mod1

ガンマ II型 ソム・ベルチオ フロール50mm f3.5
GAMMA mod.II SOM BELTHIOT FLOR 50mm f3.5

Gamma II  1948年に登場したII型ではLマウントが採用されました。そのため、I型ではマウント内側の向かって右横に距離計と連動するカムのコロが見られますが、機構の変更に伴なってここがII型では下に移動してます。また、さっきも言いましたが、I型後期からはビューファインダーの下にあった、距離計調整部の閉じ蓋ネジが消えましたので、II型にもこれがありません。つまり、ボディそのものはI型と同じような感じなんですが、実際、軍艦部の巻上げノブの下にある膨らみはI型そのもの。でも、シャッターボタンの受け皿や、ファインダー下の調整用ネジが消えているのは後のIII型と同じです。
 II型の一般的認識ですとスローシャッターの有無以外ではIII型に酷似しているものがありますが、実際、その差は巻き上げノブの下のカウンターが隠れているかどうかくらいしかありません。反対にI型後期モデルにより近い訳ですが、このII型は正にそんな感じです。ファインダーの接眼部はI型と同じつながったものだし。でも、I型にせっかく付けていた吊り環用のアイレットがII型からは省かれてしまい、専用ケースがないと大変携帯しづらくなっちゃいました。 Gamma II
Gamma II top image  このモデルのシリアルナンバーは“7”で、最初の“1”はII型から始まる捨て番。I型は“0”から始まります。正確にはII型は10004番から始まりますんで、本当に最初期のものだと分かりますでしょ。逆にIII型はどうかと言うと、今手元にある最後期のシンクロモデルも“1”の捨て番が刻まれてます。
 ガンマのシャッターの中身はこんな感じです。ユニットごとすっぽり外れちゃいます。ギアの回転力が金属板を動かしていたんですが、こうした構造ならゴム引き布幕を使った一般的なフォーカルプレーン機構よりも電気化は楽だったんじゃないかな。
 それに、この画像でコロが下に設けざるを得ない理由が良く分かりますよね。
Gamma shutter system
 ガンマII型のシリアル番号は10099番が最終で、全体でも95台しかなかったので、そのスローなしモデルは本当に過渡期に極少数だけ作られた中途半端な位置付けのモデルになります。どのみち、あっと言う間にIII型が出てくる訳ですから、その存在意義はほとんどなくなっちゃうんですね。
 ちなみに今付けているフロールは純正ではなく、後付けのものです。鏡胴回りからしてSUPER LYNXか何から外した改造品のようですが、本来はまずコリストカのヴィクトール・ガンマ55mm f3.5がオリジナルになるはず。ソム・ベルチオのレンズもガンマ独自の鏡胴に付けられて、売られていました。

ガンマ III型 ミリタリー ガリレオ・エプタミター50mm f2
GAMMA mod.III AERONATICA MILITARE OFFICINE GALIREO EPTAMITAR A.M.50mm f2

Gamma III Militare  Lマウント化したガンマII型を販売していた49年に、スローシャッターを加えたIII型が登場しました。シリアル番号は10600番からになりますが、その初期には左のモデルのような特別なモデルが作られました。これって、実は何とイタリア空軍モデルで、このカメラに驚くと言うよりも、このカメラ正式に採用したイタリア軍の勇気に驚きます(笑。だって、結構調子が悪くなりやすいのに、正確性を求められる職場で使ってたんだもん。敬礼!
 ところで、それまでのII型と細かい違いを述べますと、まずは1〜1/10秒までのスローシャッターを高速シャッターの下に設けたこと。これは後ろに伸びるレバー形の指掛けを動かして前方のとんがりを所定の数値に合わせます。スロー優先ですもんで、普段は「*」マークに合わせておかないといけません。スローシャッターマークにこの「*」があるからって、別段「1/*秒」という「果たして何分の1秒になるかな〜」なんて、おみくじみたいなシャッタースピードにはなりません。
 次にI型との違いを見てみますと、II型同様巻き上げノブの形状が変更されて、上面がのっぺらになりましたが、一般のIII型とは違って下のフィルムカウンター目盛りがI・II型と同じく軍艦部に覆われています。巻き上げノブの上面はII型以降のっぺらなカバーが被さった状態なので、これはI型の方が良かったかな。それに、このノブ、上面がボタンのようにちょっと押せるのですが、押したからと言って何も変わらないんですよ。それじゃ、一体全体何のためにこんなところにスプリングを入れてボタンのようにしたのか…、何がしたいのかサッパリ分かりません。その他の違いですが、この軍用モデルには底蓋に三脚ネジ穴が大小二つ設けられていて、これはその他のモデルには見られない特徴です。
 何でもこのミリタリーモデルはほんの25台程度しか作られなかったそうです。ちなみにマルコさんはこのモデルを「III型」として位置付けていて、一般に言われるII型を「IIab」、III型を「IIIa型/IIIb型」と区分していました。このミリタリーモデルは10600番から始まるIII型の中でも最初期のものになりますが、最終的にIII型は800台程度の生産になったようです。モデル表記は混乱しますので、とりあえずワテはこれまで日本で区分されていた通りに表記させて頂きます。

ガンマ III型 ゾナー5cm f1.5 ビクトールガンマ55mm f3.5 アンジェニュー50mm f2.8
GAMMA mod.III SONNAR 5cm f1.5 VICTOR GAMMA 55mm f3.5 ANGENIEUX 50mm f2.8

 48年末から49年半ばにかけてII型が作られた後、いよいよ最終型のIII型が登場します。何でも51年の最終モデルのナンバーが11465番だそうで、右のIII型は113XXですから、こりゃまたえらく後のモデルなんですねえ。後期のモデルからようやくシンクロ接点が付くのですが、内部機構は基本的にII型とは変わりがありませんね。面白いことに、どう言う訳かストラップの吊り環がI型以外は付いていないので、正直言って専用のケースがないと、持ち歩くのに苦心します。しかし、何でまたこんなところを省略したのかね??
 この画像のレンズはゾナーが付いていますが、ガンマは本当に色々なレンズを付けて売っていました。ゾナー付きは他でも見かけましたよ。
Gamma III syncro

Gamma III
Gamma III
 で、II型と決定的に違うところを申しますと、まずはフィルムカウンターをライカと同じように巻き上げノブの下に露出させている点。ま、こちらの方が確実な上、生産コストも押さえられるのは間違いないですからね。でも、個人的にはそれまでのノッペリツルリン型の方が好きなんすが。
 ファインダー接眼部も変更されて、窓が独立した枠で仕上られてますでしょ? それまではライカIIIb風の楕円形の枠の中に二つの窓があったんですが、それはそれで問題なかったので、またどうしてここを変えたんだろうと頭を悩ませます。ま、微細な変更ですね。
 底蓋も随分余計なものが付くようになって、一見ライカの底蓋のロックを外すようなつまみがありますが、底だけ取れる訳がないので、そういうもんじゃないです。
 はてさて、これは何かなと思ったのですが、ここには「Aperto」「Caricatore」「Chluso」と書かれています。つまり、それぞれ、オープン・ローダー・クローズと言うことになりまして、回転方向も書かれていますが、左右どちらにも回ってしまいます。

Gamma III

 どうもフィルムの巻き上げ側専用マガジンと関係があるようで、裏からみると、このつまみにツメが付いていて、マガジンのスプールの外をこのツメが回るようになってます。ひょっとしてボディのどこかとこれをかみ合わせて、軍艦部のロックとは別の、もう一つのロックにしてるのかなとも思ったのですが、これと言ってこのツメが引っかかりそうな部分が本体の内側にはないし…、なんじゃこりゃ〜! 結局のところ、専用マガジンのフィルム出口の開閉用であろうと思われますが、ゲンブツがないと確認できません。でも今まで一度も純正マガジンなんて見たことがないです…。

Gamma III M39 mount  マウントはこんな感じでシンプルそのもの。まあ、コロの位置が一般のライカ型カメラとは上下逆になっていますが、基本的に何らおかしなところのないL39マウントですな。中の壁のデザインはI型とは随分違ってます。エルマータイプのぺったんこレンズはヘリコイドの指掛けが横のシンクロソケットに当たって入らない場合がありますが、ちょっと無限遠からずらしてやるとOK。

 さて、III型のバリエーションをば。上はIII型の標準タイプで、シンクロソケットはありませんです。レンズはコリストカ。細かいところの違いはあるやも知れませんが、このモデルがガンマIII型のほとんどを占めるようです。Marcoさんの言うIII型全体でみると10600〜11465番まで作られたそうです。これには前記ミリタリーモデルも含んだ数字です。それに、シリアルは途中隙もありますから、III型全体でもせいぜい800台程度の生産台数と考えるのが間違いなさそうです。
 下は後期型のシンクロ付きで、レンズはシュナイダー・クセナー50mm F3.5。ボディをよく見ると、シャッターダイアルに小変更が見られますでしょ? 高速シャッターと低速シャッターの狭間にあるのはライカIIIfなどにもあったシンクロタイミング合せ用ダイアルです。と言っても、ここにはL1とE1の表記しかないです。このカメラの番号は114XXで、かなり後期のものですから、このタイプになったのは最後の頃らしいです。で、上記の113XXのものではこのリングが省かれ、単に1/30・1/50秒以下でストロボに同調します。FP級ですと、テストをしていないので分かりませんが、多分これ以上のスピードで同調するんじゃないかなあ? ま、テストしようにも、もうバルブがなかなか手に入らないですがね。

Gamma IIIA
Gamma III syncro 2

 ガンマは誰も思い付かないような独創的なシャッターを持ってますが、個人的には強引に専用マウントを使ったI型にはイタリア職人のアイデア任せにウリャーと突っ走るような気質が最も強く感じられて、とても好感が持てます。使い勝手は決して良いとは言えないですが、それを言ったらおしめーよ、と寅さんに言われます。
 なお、ファインダーが向かって右にズレているのはシャッターの機構を避けるためのものですが、これもガンマのチャームポイントですね。

The image proffer: Mr.Marco Antonetto

ガンマ ペルラA型 シュタインハイル・カッサー50mm f3.5 ペルラB型 シュナイダー・クセナー50mm f2.8
GAMMA PERLA tipo.A Steinheil Cassar 50mm f3.5 PERLA tipo.B Schneider Xenar 50mm f2.8

Gamma Perla A/B

Perla A  金属板フォーカルプレーンシャッターと言う特異な機構のガンマがイマイチ売れず、会社の存亡も怪しくなってきた中、夢ばっかり追い求めるのはあっさりあきらめて、現実的な方向に路線変更して開発されたのがこのカメラです。考えてみるとイタカメには本格派フォーカルプレーン機の下には一歩間違うとトイカメラ然とした安カメラしかなかったですから、もう一歩家族で使いやすくそれでいて充分な性能を持った新たな中級機を開発するのは間違った選択ではなかったと思われますね。
 で、1951年に突如大幅にデザイン・機構ともに変更されたこの「ペルラA型」が登場する訳なんですよ。当初からレンズやシャッターを色々選べ、これをガンマでは細かく分類してA/A1/A2/B/Cと呼んでました。ここにご紹介する二台はA型とB型で、その分類法は後でお話し致しましょう。
 ご覧の通りこうして見ると何の変哲もないレンズシャッター式レンジファインダー機で、わが国にもこうしたモデルはごろごろありましたね。51年ですから、まあ早い方かも知れませんが、それでも本場ドイツでは既にたっぷりありました。ただ、特筆すべきはファインダーが等倍なんですよ。これは見やすくいい感じなんですが、裏を返すとなーんもレンズが入っていないただのガラスとも言えます(笑。それでも像の分離はなかなかのもので、後で現れるガリレオのコンドールII型よりすっきりさっぱり。できれば視度補正機能があると良かったけど。
Perla A
Perla A
Perla A  シャッターはこのA型にはプロンターSが付いていて、B・1〜1/300秒まで使えます。レンズはシュタインハイルのカッサーで、F3.5の3枚玉です。言わば最もベーシックなモデルがこいつなんですよ。
 BとC型はシンクロ・コンパーが入っていて、レンズもそれぞれシュナイダーのクセナーF2.8・クセノンF2にグレードアップ。1/500秒シャッターが入ってます。この他にA1はカッサーF2.8付き、A2はクセナーのF3.5付ですが、シャッターはプロンターSで、C型はクセノンのF2が奢られてシャッターもBと同様シンクロコンパーが使われていました。
 55年になるとA型はスティグマー(Stigmar)F3.5になり、56年にはカータ(Kata)F3.5になって巻き上げノブのデザインがちょっと変わりました。この頃には露出計が埋め込まれたモデルとラジオナー(Radionar)F2.8付きも加わるようになり、更にはレバー巻き上げ式にしたII型も登場します(後述)。また、距離計を外したアルバ(Alba)とスローのないアトム(Atom)や、そのファインダーを等倍にした(Stella)なども作られました。 Perla A
Perla B  横道にそれちまいましたが、このペルラは巻き上げとシャッターチャージは連動してませんので、いちいちセットせにゃならんのが面倒です。そのくせ、沈胴レンズにこだわって、ほんの8mm程度しか引き出せないのに沈胴化してます。こんなことするならセルフコッキングにしなされ〜と言いたくなりますが、ま、これもこのカメラの個性と割り切らねばならんですな。全体になかなか良くできたカメラで、イタリアンレンズシャッター式RF機ではコンドールII型に次ぐレベルなのは明白です。と言うより、その後に続くカメラがエルマン・オリンピックやクロスター・プリンセスですから、比較の対象が貧弱なだけとも言えます(笑。

ガンマ ペルラII型 シュナイダー・クセナー50mm f3.5
GAMMA PERLA II Schneider Xenar 50mm f3.5

Gamma Perla II  56年になって、ガンマもオフィチーネ・ガリレオのコンドールIIに遅れをとっていた分を取り戻すべく、フィルム巻上げをレバー式にして、同時にシャッターチャージもレバーに連動したセルフ・コッキング機構を組み込んだペルラII型を発売します。たかだかレバー巻上げにするだけにもかかわらず、ボディの角を丸くするのは、金型を一から作り直さねばならず、えらい大変なはずですよねー。でも、何でまたこんなことしたのか、不思議でしたが、それにはちゃーんと理由があったんですよ。
 ペルラII型のレバーは面白いことに前から後ろに巻き上げるようになっていて、予備角はおよそ25度ほど引き出せるようになっています。で、一旦それを引き出すと、レバーは元に戻らなくなりますが、レバーの付け根にある小さな別のレバーを押すことで、予備角が解除され、元の位置に戻る仕組みになってまして、このカラクリを円盤部分に組み込んでいます。その円盤部分の上にはフィルムカウンターが乗っかっていて、巻き上げノブのようなつまみを回して調整します。 Schneider Xenar 50mm f3.5
レバーが前に出ているので、後ろ姿が変です〜。  左はレバーの予備角を引き出した状態での背面画像。正面もそうなんですが、ファインダー枠の周りにちょっと段差を付けてちょっとオシャレになっていますでしょ。でも、イメージはちっとも変わらないんすよねぇ。では、なぜわざわざ金型を変えてまで角の丸いボディにしたのかと言うと、これはレバー巻き上げ機構を組み込むために採った策で、どうにも仕方なかったんでしょう。
 軍艦部を外すと、レバーの下に大きなギアが入っていて、シャッターボタンの後ろの辺りにある小さなギアと噛み合っています。そこからさらに内側に歯車が入っていて、これがシャッターチャージ用のパーツを回転させます。レバーの下にある大きなギアは、直接巻き上げスプールを回すのではなく、一旦小さい方のギアに移った力を利用して歯数の異なるギアを駆動させて軸を回転させます。だから、レバーの巻き上げ角は200度程度なのに、軸は340度ほど回転します。 下からの眺めは平凡です。
シャッターチャージも巻き上げと連動に!  この歯車のおかげで端を従来の八角ボディにできず、丸くして逃げを作った訳なんですが、とても良くできてますよ。
 そのレバー巻上げ機構のために、沈胴式の鏡胴は使えなくなって、立派なヘリコイドリングが入っていますが、従来のモデルの沈胴量は8mmではほとんど意味なしですので、わざわざガリレオ・コンドールIIのような機構を、無理して組み込まなかったのは正解でしょうね。
 ペルラII型にも色々とグレードがあって、このベーシックなモデルではプロンターSシャッターが使われています。
 ペルラIIを使ってみると、この“ひねくれ”巻上げレバーって思いの外使いやすいんですよ。人差し指はシャッターボタン上にあるので、中指でレバーの先端を引っ掛けて後ろに引くんですが、それが意外に無理のない位置にあって、結構迅速に巻き上げられます。ただし、巻き上げ量自体はかなり多いので、レバーが目の位置まで近付いちゃうために、やはりファインダーから一瞬目を離さざるを得ませんがね。
 軍艦部を固定するネジは妙なカラクリが使われていて、一瞬普通のネジみたいな丸いものは細長い筒の先端で、雌ネジになっています。これを上から差し込んでおいて、下から普通のマイナスネジを噛み合わせて固定するんですが、その面倒くささの割にまず気付いてもらえない寂しい工夫です(笑。
距離計の調整はフィルムレールの上部の穴から。

ガンマ アルバ F型 エンナ・エンナゴン45mm f2.8
GAMMA ALBA F Enna Ennagon 45mm f2.8

Alba1.jpg  ガンマ・ペルラの売れ行きが好調だった1953年、ガンマは大きなビューファインダーはそのままに、距離計を外したステッラ(Stella)を発売し、より買い求めやすいモデルを揃えるようになりました。そして、55年にファインダーを小さくシンプルな逆ガリレオ式ファインダーを中央に一つ置いて、シャッターやレンズもより安価なものにしたモデルを発売ましたが、これがアルバです。アルバは別にアトム(Atom)名でも売られましたが、中味は変わりません。多分、卸先のディーラーによって名前を使い分けていたような感じですね。
 アルバのシャッターはB.1/25〜1/200秒のプロント(Pronto)を装備したF型とB.1〜1/300秒のプロンター(Prontor)SVSを備えたB型に分かれ、前者にはエンナ社製のエンナゴン(Ennagon)45mm F2.8が、後者にはシュナイダー社製ラジオナー(Radionar)50mm F2.8が付いてまして、どちらも3枚玉なんですが、やはり位置付けは後者が高級なモデルとして扱われていたようで、価格も前者が16,900リラであったのに対し、後者は23,900リラでした。 Alba2.jpg
Alba3.jpg  ここにアップしたものは5枚羽のプロントシャッター付きのF型ですが、このカメラの最大の特徴はセルフコッキングを達成していることです。これはペルラでもやらなかったことなんですが、実はアルバは固定鏡胴を用いているために、わざわざ複雑な機能を加えることなく巻き上げノブとシャッターを連動させることが可能だったんですね。それにしても巻き上げ感は軽く、一時わずかにゴリゴリっとする以外はシャッターチャージをあまり感じさせないのは立派ですね。それにセルフタイマーも付いてますし。
 絞りはf2.8〜f16までの6段階の10枚羽で、レンズは前玉回転式の3枚玉ですが、これが思いの外良く写るんです。前玉にアンバー系、2枚目にマゼンタ系、3枚目にシアン系のコーティングが施されていて、この辺りの細かさはさすがドイツ製と言う感じ。ヘリコイドの回転量は100度くらいしかなく、2mから∞までは45度程であるから、3m程度に合わせて絞り込んでおけば、パンフォーカス的に使えます。それでいてシャープネスもなかなかですんで、街中のスナップ等ではかなり気軽に使えるカメラですね。 Alba4.jpg
 巻き上げは当然自動巻き止めですが、安価でコンパクトな35mm判カメラに良くありがちな、太いドラム形の巻上げスプールを一定量回転させる安直な機構は採らず、しっかりとパーフォレーションを利用したスプロケットの回転数で停止位置を決めてます。
 内部の結晶塗装もとてもしっかりしていて、鏡胴から感光面に至るまで、内面反射を防ぐために円形から四角形へと変わる一体成型の壁がはめ込まれていまして、この点ではペルラよりも優れているんですよ(えっへん)。

ガンマ アトラス ガンマール・アクロム 50mm f6.3
GAMMA ATLAS Gammar Acrom 50mm f6.3

Atlas1.jpg  56年のペルラIIからガンマはボディの角をバルナック風に丸めましたが、そのボディを元に作られた廉価版がこのアトラスで、スペック上では簡易カメラに入る大変シンプルなカメラになるんですよ。これでガンマはペルラ>ステッラ≧アルバ>アトラスと言う4段階のラインアップを揃えることになりました。
 アトラスのスペックは字面ではベンチーニの35mm判と何ら変わらないレベルのもので、いかにも簡易カメラっぽいです。すなわち、距離計のない逆ガリレオ式ファインダー、P(バルブ)・1/30・1/100秒の3段階だけの2枚羽シャッター、単玉レンズ、F6.3とF11のみの絞りと言う具合です。
 でも、ベンチーニ・コロール35と並べて見ると、作りそのものがまず違うことに気付きまっせ。持った瞬間にそのずしりとした重みもさることながら、裏蓋を開ければパーフォレーションに噛み合うスプロケットの存在が目に入ってくることから、「やはりしっかりしたメーカーのものは違うんだな〜」と、極当たり前の機構に感心しちゃいます(^∇^)。シャッターもたった2速しかないのに妙なところに凝っていて、低速側(1/30秒)にセットすると「ジョッ」と言うガバナーの音が聞こえてくるのもエバーセットのギロチンものとは違いますね。 Atlas2.jpg
Atlas3.jpg  普通、安価なカメラではシャッタースピードを変更する場合、中のスプリングの張力を直に変化させて、それだけで速度を変更する場合が多いのですが、このカメラは安定した低速を確保するために、部分的に本格的なレンズシャッターの機構を採り入れている訳なんですね。
 レンズは単玉ですが、色収差を少しでも減らそうとした1群2枚のアクロマチックレンズで、シアンコーティングも施されています。
 名前こそGammarとなっていますが、ミュンヘンの刻印があることから、上級機と同様にドイツのエンナにレンズを発注していたんでしょう。絞りは一枚の円盤に大きさの異なる円をくり抜いた簡単なもので、絞り変更は鏡胴上面のレバーを左右に動かすだけです。
 フィルムの装填は底面のくの字のレバーを回転させてロックを解除し、ここと一体になった裏蓋を外して行います。巻き戻しはシャッターボタンのすぐ手前にある小さなボタンを押しながらノブを回すんですが押し続けないといけないので、ちと面倒です。
Atlas4.jpg
Atlas5.jpg  このように、ガンマ・アトラスは必要にして最小限の機構しか持ち合わせていない単純なカメラですが、それらの一つ一つが手堅い作りで、簡易カメラと捨て置くにはもったいない気もしますね。
 ガンマはこれ以降、カメラの生産を終了してしまいました。当初しっかりしたカメラを作っていたのに、安直に簡易カメラを作って失敗した訳です。日が沈む前に空を赤く染める姿は、それはそれで華やかなものですが、このガンマ・アトラスの場合、釣瓶落としで沈みかかった秋の夕陽のようで、何かもの寂しい雰囲気も感じられてしまいますね。正に「夕陽のガンマ」と言うカメラです。

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