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Nikon S

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種類: S型
発売年: 1951年
メーカー: 日本光学工業
サイズ: 136x79x68mm
重量: 775g(50mm F1.4付き)
シャッター: 布幕横走りフォーカルプレーン T、B、1〜1/500秒
ファインダー: 二重像合致一眼式
標準レンズ: ニッコールSC 5cm F1.4またはF2、F3.5
レンズマウント: ニコンSマウント
シリアルナンバー: 6102834
生産台数: 37646台
分類番号: グループ2

 海のニッコー、陸のトーコー。戦前日本光学と東京光学はこのように讃えられ日本の光学メーカーの双璧の一翼であった。特に戦艦大和の測距儀は光学兵器の極致で、42km先の敵艦に1.46トンもある46cm砲弾を命中させるための光学兵器で、いわばレンジファインダー(距離計)のお化けのようなものである。また、ハンザキヤノンにレンズや距離計などを供給していたのも日本光学であった。終戦時日本光学は25の工場と25000人の従業員を抱ええる大光学メーカーであった。終戦後、日本光学は人員を縮小、6383名まで減らし再スタートを切る。

 光学メーカーであるので民生品で復興するにはやはりカメラが一番であったのだろう、まずは1948年にニコン(後にI型と呼ばれる)を発売。これは先行量産型というか、生産台数も758台である。I型はフィルムサイズを24×32(通称日本判、ニコン判)を採用した。しかし、すぐ当時日本を占領していたGHQからクレームが入り(コダックのマウント自動カッターでは変な場所を切るためマウントできない)次のM型では24x34になっている。その細かい点でも内部機構なども改良され、作りが良くなってきている。生産台数1643台。これがニコンSの母体となる。まだまだ先行量産型の域を出ない。そしていよいよ1951年にS型が発売される。基本的にはM型にシンクロ接点(現代のドイツ式接点とは違い2軸式の特殊なもの)を付けた型である。細かい部分は違うが、生産中に順次変更されていったようで急激ではない。生産台数は一挙に増え37646台にのぼっている。
 ニコンSは、よくコンタックスコピーといわれるが、それは大きな間違いで、外観とレンズマウントはコンタックスを真似ているものの、内部構造はむしろライカに近い。ただシャッターダイヤルは低速と高速を同軸に配置している。

 この後ニコンS系はS2、SP、S3、S4と発展していく。特にSPはレンジファインダーの最高峰と評される名機である。ニコンの名を一躍世界に知らしめたのが、朝鮮戦争でD・ダンカン氏がニッコールを使ったことであろう。日本に滞在していた時ダンカンを三木淳氏が35mm F2で撮影した写真を見せたところ、ダンカン氏はそのシャープさに魅かれ、ニッコールを持って朝鮮戦争を撮影した。その時のボディーはライカでニッコールレンズは5cmと13.5cmを持って行ったそうである。その後ボディーもニコン製に代えたそうである。このダグラスの送った写真を見て4x5で撮った写真と信じたとか、いかにも大げさな逸話が付きまとうくらい当時としてはよく写ったのだろう。その後ベトナム戦争などでもニコンはそのタフさなどで名声を得ることとなる。
 ところで、ニコンSの使い方であるが、まず注意すべき点はそのレンズマウントである。コンタックスのレンズがそのまま付く。付くのであるが、コンタックスとニコンS系ではヘリコイドの繰り出し量が違うため、距離計との誤差が出てくる。35mm広角以下なら誤差が被写界深度の範囲内なので、使用は可能なのであるが、標準レンズ辺りからは注意が必要である。標準以上は使用しないほうが賢明であろう。レンズはニコン純正が21〜135mmまでと豊富で、ミラーボックス用望遠レンズもある。サードパーティー製もわずかながらある。21、25mmなどは大変数が少なく、特に21mmは見つけるのも困難で大変高価。25mmでも数十万の値はついている。
 レンズの交換の際は必ずボディーのヘリコイドを無限遠にしなければならない。フォーカシングギアは標準(F1.1は除く)と25mm用で、後はレンズのヘリコイドを使ってピント合わせをする。
 フィルムの装填はコンタックス式で裏蓋が底蓋ごと外れて装填しやすい。またコンタックスのように禁止操作がないので使いやすい。シャッター音なども大変軽い良い音がして作りのよさをうかがわせる。操作も滑らかで工作精度は大変高そうだ。
 このニコンSには明るいF1.4が付いている。当時カール・ツァイスからゾナー50mm F1.5のコピーとクレームが付いたレンズだ。実際、開放値は1.5に近い暗さである。ただ、カール・ツァイスが目くじらを立てるほど良くできたゾナーコピーということだろうが、まだまだコピーの域を脱していないレンズでもある。古来日本には手本に習うという風習があり、「学ぶ」の語源は「まねぶ」、つまりうまい人のまねをすることから始まるという考えがある。ヨーロッパのよう独自性を重んじコピーを毛嫌いする風習とは少し違う。それゆえ日本のカメラ黎明期から発展期の初期にはコピーから始まるのも致し方ないところであろう。ちなみに、このレンズのスペックは以下の通りである。
【レンズ構成3群7枚(ゾナー型)、フィルター径43mm、重量210g】

作例:「夏の思い出」

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ニコンS ニッコール SC 5cm F1.4
シャッタースピード〜1/500秒 絞り〜f5.6 コダックポートラ400 白黒ペーパー焼き

 実際に写してみると、さすがに良くできたレンズのようで、それほどの破綻は感じない。やや線が太い感じもするが、シャープネス、解像度はよさそうだ。カラーでは幾分色が渋いとの評である。とりあえずほとんど白黒で撮っているので、作例も白黒を掲載しておく。

by 絶版倒産カメラ狂

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