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黎明期のカワサキオフロードバイク

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B8M

 1963年にB8Mの鮮烈なデビューで「赤タンクのカワサキ」を多くのモトクロスライダーに強く印象付けたカワサキの最初期のオフロードバイクの数々です。当時はまだトレール車の概念ができておらず、どのメーカーもパワーを最優先していたが、カワサキは操縦性も視界に入れたバイク作りをしていました。

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 カワサキG1M

 67年デビューの市販モトクロッサー。90G1Lをベースに作られたもので、ロータリーディスクバルブエンジンを搭載する。パワーは14ps/9000rpmで、かなり元気のよいバイクであったようである。ちなみに65年には85ccのJ1Mが既にデビューしていたが、そちらは11psであった。星野一義等がこのバイクで活躍した。

カワサキB1M

 こちらは66年に発売されていた125B1をもとに作られたもの。「赤タンクのカワサキ」の名を轟かせた歴史的な名作であるB8Mの後継モデルで、ロータリーバルブ化されている。パワーはB8Mの12psから15ps/8500rpmに向上している。トルクは1.35kg-m/7500rpm。タイヤは前後とも18インチのままであった。

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カワサキF21M

 67年デビューの国内初の市販250cc級の純モトクロッサーで、以降圧倒的な強さを誇った。国内では山本隆によって三連覇を成し遂げた。初期はB11と同じタンクを付けていたが、すぐに写真のように輸出用175F3ブッシュウェーカーのタンクに換えられた(しかし、赤タンク)。パワーは30ps/7000rpm。車重は98kg。この専用フレームを持つバイクこそ国産初の純市販ダートバイクである。

カワサキF2TR

 67年型のトレールモデル。とはいっても、ダウンマフラーのF2を手直ししただけのもので、まだまだ純粋なトレール車とは言えず、スクランブラーの範疇に入る。B1のエンジンを175ccにボアアップした輸出車で、F2は国内ではB11と呼ばれたが、それにはTR仕様は存在しない。

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カワサキC2SS

 67年にデビューした、本格的トレール車のさきがけ。まだまだスクランブラー的な要素も残るが、軽量でスリムなデザインは、後のトレール車の基本となっていく。基本的に他のモデルとエンジンベースは変わらないが、排気量は120ccで11.5ps/7000rpmのパワーを持つ。下のMXはキットパーツを組み上げたもので、TRは輸出車。ロードランナーの愛称を持つ。

C2SS・MX
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C2TR
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カワサキ90SSS・MX

 69年の90ccGAシリーズの一つ、90SSSにキットパーツを組み込んだもの。パワーは本来10.5psであったが、チューンすると15psには軽くアップした。その姿形もとても精悍で、完全にストリートスクランブラーであったノーマルとはかなりイメージが変わっている。海外では美しいライムグリーンに塗られ、G31センチュリオンとして売りに出された。

カワサキF3ブッシュウェーカー

 68年にアメリカでデビューした輸出専用モデル。排気量は175ccで、17psの出力を持つ。C2SSの後継モデルであるが、残念ながら国内では発売されなかった。このバイクまではF=175ccの形式名という公式が当てはまるが、これ以降F=トレールの意味に使われるようになる。ちなみに3種のカラーリングが存在する。

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カワサキF4サイドワインダー

 F3と同様、68年にデビューした輸出専用トレールモデル。マフラーなどからも分かるように、よりダート志向の濃い味付けがされている。排気量は250ccで、DT-1のデビューに触発されてF21Mのエンジンを使って作られた本格派トレールモデルである。パワーは23ps。しかしF5の開発のため、すぐに生産中止になった。

カワサキW2TT

 こちらも68年にデビューした輸出専用車で、W2SSコマンダーのストリート・スクランブラーバージョン。当初はW1と同じメッキタンクに小さなサイレンサー付であったが、すぐにこの弁当箱マフラーになった。パワーは53ps/7000rpm、5.7kgm/5500rpmと強力で、0-400m加速は13.7秒であるから、その走りも豪快であったろう。

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上昇期のカワサキトレールバイク

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F5B

 69年から72年にかけてのカワサキが最もカワサキらしかった頃のオフロードバイクの数々です。ロータリーディスクバルブをかたくなに使い続け、とにかくハイパワーを目指していたバイクたちです。

カワサキ350TRビッグホーン

 69年にアメリカでデビューし、日本では70年から発売された。形式名はF5・F5A・F5Bの3種で、初期型はローハイドブラウン、A型はグリーンのぼかし、B型はグリーンレインボーのタンクが付いていた。パワーは33ps/6500rpmで、0〜400mは14.8秒で走る、2stロータリーディスクバルブのパワフルトレールである。Fフォークにはトレールとキャスター・スプリングの強さ・フォークの長さが三段に変更できる“ハッターフォーク”が付けられている。後にF9と名称変更され、軽量化されたF5Bの輸出モデルからそう呼ばれたが、国内モデルとは異なりこちらは29psに若干デチューンされた。73年頃には既に国内販売を終えていたが、74年・75年にもアメリカではタンクデザインを変え、Fフォーク周りを一般的なものに変更して、エンジンもマイルドに味付けされたF9が売られていた。
 F5Bのエンジンは幅が多少つめられ、マフラーもより消音効率のよいものに取り換えられている。エンジンも黒く塗られ、実に精悍である。初期型に見られるようなボコつきも改善され、フレームの手直しもあいまって、その乗りやすさは相当向上していると当時の雑誌のインプレッションに書かれている。キャブは口径が狭められたが、吸入効率の向上によりパワーは損なわれていない。

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カワサキ125TRボブキャット

 70年に完成したモデルで、形式名はF6。この後F6B型になってタンクデザインがKM90のようになる。エンジンはやはりロータリーディスクバルブで、15psのパワーを絞り出すが、この値は当時のツイン125ccロードバイクと同じ数値である。ロングストロークのためか低速から結構力があり、他社の125ccトレールよりもかなり加速のよいエンジンである。フロントタイヤが18インチであるのは残念なところである。どういう訳かリアキャリアを標準装備していたが、カワサキ車には珍しいことである。

カワサキ250TRバイソン

 70年デビューの、ビッグホーンのボアダウンバージョン。パワーは23.5ps/6500rpmで、当時の国産トレールモデルでは最高であった。形式名はF8。120kgのF5に比べて123kgになり、若干重くなっている。フロントタイヤも21インチから19インチにダウンされ、リムそのものもアルミから鉄リムへと変更されている。とはいうものの、4メーカーのトレール車の中では断然力があり、速いモデルであることは事実である。実は“バイソン”の名は既に他の自動車メーカーの登録商標になっており、71年モデル以降はそのメーカーからのクレームにより“バイソン”の名を使えなくなった。

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カワサキ90TRトレールボス

 ビッグホーンと共に69年に完成したモデル。形式名はGA4。エンジンは以前の90SS系のものを使い、フレームを一新して完全なトレール車を作った訳だ。パワーは変わらず10.5psだが、若干中速寄りにセッティングされている。全90ccトレール車最強のエンジンを搭載する。アメリカ向けには100cc副変速機付きのG4TRが作られた。

カワサキF7

 TRシリーズ中、最も遅くデビューした175ccモデルで、ボブキャットのボアアップバージョンである。ただし、国内では発売されなかった。また、ニックネームも付けられていない。フロントタイヤが19インチになり、F5・F8と同様ハッターフォークが付けられた。パワーは20ps/7500rpm。映画『栄光のライダー』で初心者がフラフラ乗っていたのはこのバイクである。

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カワサキ250TR

 72年デビューの、バイソンのフルモデルチェンジバージョン。形式名はF11。このモデルからついにロータリーバルブと別れ、ピストンバルブとなる。これはモトクロスで求められる軽量なエンジンの開発によるものである。パワーは変わらず23.5psだが、より低回転型の味付けがなされている。当時の雑誌のインプレッションを読むと、ハスラーのMX風な味付けと異なり、かなり大陸的な味付けがなされており、直進安定性に優れていたようだ。エンジンも急激なパワーの上昇はなく、ある意味ではマイルドなのであるが、いつの間にかかなりのパワーを生み出すたくましい印象のものであった。これは6000rpmという低い回転で最大出力を生むことからくる、ピックアップの良さに起因する。トルクも2.81kgmと、当時のトレール車では圧倒的に強かった。デザイン上ではテールカウルがアクセントになっている。

カワサキF81MS

 70年のカワサキのワークスモトクロッサー。かなりバイソンを改造しているが、いかんせんエンジンが重すぎてどうにも良い結果を残せなかったようである。特にタイトなコーナーの多い国内のコースでは、どうしてもその重さが足を引っ張ったようだ。やはりデザートレーサー的なバイクだったのだろう。

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カワサキF5M

 こちらはビッグホーンにキットパーツを取り付けてモトクロッサーにしたもの。当時はこうしたパーツがメーカー純正で販売されていた。アメリカではダートトラックレースなどでも活躍した。また、これとは異なるが、アメリカカワサキのチームハンセンではF5Rとして250ccクラスのロードレーサー(単気筒は350ccまで可)としても使われた。

カワサキF11MS

 71年に入ってロータリーディスクバルブエンジンに見切りを付け、軽量な250ccピストンバルブエンジンを開発し、モトクロッサーに仕上げたものがこのバイク。奥にはF6MSが見える。軽量な125ccであるこちらは、新ロータリーディスクバルブエンジンが使われている。いずれもKXの元祖となるワークスモデルである。

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