ヨコハマ・マウンテン・パッセンジャーズ
林道ツーリング〜単独走行編

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 90年8月、加藤嘉主演の映画『ふるさと』に感動した私は、その舞台となった岐阜県揖斐郡徳山村を目指して一路東名高速を西走した。
 根尾村の南部で夜明け前にテントを張って仮眠した私は、朝はやる気持ちを押さえて安全に北上し、10時前には徳山村に到着した。ただ、将来ダムに沈む徳山村は、当時でも既に廃村となっており、釣り客以外は全く人影がなかった。しかし、一軒だけ頑固に自分の家を捨てずに残っている人がいた。

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 その人によると、もうこの村に暮らす者は自分たち夫婦以外おらず、電気もガスも止められているため、自家発電で生活しているそうだ。また、一人でもそこで生活する者がいる限り、工事も進まないとのことだった。現在はダムの必要性がほとんどないのに、何十年も前に決められた建設案を今になって強引に実行しようとすることによって、ふるさとを奪われる人達のことを行政は本当に考えているのだろうか。
 その後、村の西部の集落である門入に向かい、そこから南下してホハレ峠に向かう。右上の写真はその途中でたまたま通りかかったハイカーに撮ってもらったもの。彼らによると先で車の通れない崖崩れがあると言う。行ってみると実際バイクでも何とか通れるくらいの状態であった。もはや通る人はいないのか、どこも結構荒れていたが、かなり走り応えのある林道である。

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 坂内村の国道に出てUターンし、ホハレ峠の林道の支線を走った後に門入に戻り、そこで西と北に延びる行き止まりの林道を走ってみた。左の写真は西側の林道でのもの。10kmに達するかどうかというところで道がなくなった。北側の林道は鬱蒼とした感じの中をひたすら走る感じで、7km程度で獣道に変わってしまった。
 再び徳山村の中心部に戻った私は、そこから国道417号を北上して、途中から左に進んで塚林道を走ってみた。ここは89年に来た時よりも舗装化が進んでいるようで、高倉峠の付近は真っ黒なアスファルトが敷かれていた。それでも全体でまだ15kmはダートが残っており、充分楽しめる林道である。左下の写真は途中のウソ峠付近のものであるが、名前の付け方がおかしい。今では既にこの辺りも舗装されているのだろうが、ぜひもう一度走ってみたい山岳林道である。

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 塚林道を往復し、またまた徳山村に戻った私は、薄暗くなったものの村の学校や周辺の家屋を見て回ったが、どこもガラスは割れて薄ら寒い雰囲気であった。
 馬坂トンネルを越えて根尾村に戻ってきたのはもう8時頃。ここには落合キャンプ場があり、そこでテントを張ったが、先客の数家族が夜中まで飲めや食えやでどんちゃんさわぎ。花火もずっと続き、たまらなかった。キャンプの好きな連中なのだろうが、困ったものである。

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 明け方まで騒いでいたバカ家族達は朝起きてみるととてもだらしない姿で寝ていた。何人かは地面に直に寝ていたほどである。こんなしょうもないところはすぐに退散し、また馬坂トンネルを抜けて徳山村に向かい、国道を北上しつつ今度は冠山林道を走った。
 冠山林道は89年に走った時はまだ半分ほどダートが残っていたが、この時は完全に舗装されていた。ダム工事が完成したら福井に抜ける観光道路にするつもりなのだろうか?

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 福井に抜けた私は県道を左に向かい、国道157号線を南下して麻那姫湖に出た。ここで国道とは逆の裏側の道を走るが、途中まで舗装されていた。支線に入ると険しい山岳路が続いたものの、かなり高いところで行き止まり。しかしながらかなり走れたので、今では東側の上大納の集落につながっている可能性がある。もう一度ぜひ調査してみたい林道である。
 麻那姫湖沿いに走って行くが、とても爽快な所である。下段の左側の写真はそこでのもの。

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 発電所の手前を左折して、当時の地図ではつながっていなかった笹生川貯水池方面の道を走る。ツーリングマップではつながっているようなので、安心して走っていたが、全舗装なのは少々がっかりした。仕方ないので地図にない支線も走ってみるかと思って左折してみると、道がどこまでも続いている。そのうち県道に出てしまったが、結局しっかりと抜けられた。その林道の名は和泉上笹生線とか言ったか。

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 新たに発見した林道を往復して再び九頭竜方面に向かい、白鳥に出てから昼食をとった。それからしらおスキー場周辺のダートを走って北上し、荘川村に出てから黒谷明宝林道を南に下る。右の写真はその途中で写したもの。山中峠より南側はずっと下り一辺倒でなかなかスリリングであった。個人的には下りは好きな方なので、ついついスピードが出てしまう。11km位の林道で、実に走りやすく気持ちの良い林道であった。 

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 飛騨美濃道路の途中にある駐車場に出たが、その手前でパラグライダーをしている人がいた。しかしながら、一体どこから飛んで来たのだろうか。この辺りはさほど高度が高い訳ではなく、飛び降りるような所は見当たらなかった。
 清見村に入ってからは赤谷宮峰林道に入った。この道は10km未満の平凡な道であったが、高山方面の抜け道としては最高の道である。ダム側の道は途中から舗装されていたが、反対の道は未舗装のままのようだ。

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 赤谷宮峰林道を抜けてしばらくすると、国道41号線に出るが、ここから高山の方には向かって北上して、市内を抜けてから国道361号を開田方面に向かった。途中右折して秋神川沿いに真っ直ぐに進んで行くが、だんだん日が陰ってきて、早くキャンプ場に辿り着かないといけない状態になった。そのうち道はダートになり、何故か濁河温泉に出てしまった。地図では直進すると開田に向かうはずなのに、何時の間にか右に進んで南側の道を西に戻っていたらしい。

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 ぐるっと濁河温泉のダートを一周して、元の道に戻り、開田高原キャンプ場に到着したのは8時になっていた。たくさんの人達がここでテントを張っていたが、根尾村のキャンプ場にいた人達とは異なり、実に“オトナ”であった。管理人のオバチャンもきさくな人で、遅くやって来た私に対して、何のいやな顔もせずに中に入れてくれた。
 さて、朝早く目が覚めた私は、今回のもう一つの目玉である御岳林道を目指してバイクを走らせた。王滝村でガスを補給して御岳林道入口に到着したが、その様子はこれまでの林道の雰囲気と異なり、何か実際に林業で使われているような印象の道である。路面は土質で、雨は降っていないのになぜだか水溜りや泥が多かった。分岐もいくつかあって迷ってしまいそうになる。あまり展望もきかないので、注意深く走っていた。

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 しばらくすると突然視界が開け、御嶽山が正面に見える所に出た。さらに進むと濁川の土砂災害復旧現場に出たが、そこで撮った写真が左下のものである。ここの橋はコンクリートのもので、よく見ると下が普通の橋と異なり、全てくり貫かれているのではなく、三つの土管のような穴が空いているだけである。しかもこの日は一番奥の穴からだけ水が流れていて、他の二本は岩などが塞いでしまっているようだった。これは大雨が降った際に、わざと岩で穴を塞がせて、水は橋の上を強制的に流れるようにする仕組みのものらしく、結果的に橋が流されないようにするための工夫であるようだ。
 橋を渡るとすぐに道が左右に分かれるが、どちらを進めばいいのか見当が付かず、適当に左に進んでみたが、これが正解だったようで、しばらくしてから滝越の集落に出ることができた。

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 滝越からは真弓峠に向かうべく氷ヶ瀬に戻ったが、林道入口が見付からずしばらくさまよった。上の写真はアタックツーリング好きの方御用達の所で、ぬたぬたの急坂であった。もう一つ入った所には鍵の掛かっていないゲートがあったが、入ってしばらくすると道の真中に真っ黒な牛が一頭、じーっとこっちを見ながら立っていた。気味悪かったがわずかな隙間を通ってその場を抜けたが、先は行き止まりでまた牛のケツの後ろをそろ〜りと走り抜ける羽目になった。

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 結局滝越に戻って白巣峠方面の道を走っていると、XL250Sに乗った地元のライダーに教わり、途中の見落としそうな分岐を左に折れて真弓峠に出ることができた。木の柵が分岐の入り口に設けてあったが、鍵はやはり掛けられていなかった。
 真弓峠はうぐい川林道とも呼ばれ、かなりの距離を楽しめる林道であるが、残念ながら現在では完全に封鎖されている。近年の岐阜県の林道の管理ははっきり言って疑問符が付く。危険だからと言ってただ封鎖していればよいのだろうか?

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 加子母村に抜けて、瀬戸川高樽林道に出た私は、そのまま付知川沿いに国道257号線に出て、中津川市から中央自動車道に乗って帰路に就いた。
 この時の全走行距離数は2000kmにも達するものがあったが、不思議と疲れは全くなかった。ただ、今でも強く印象に残っているのは、大きな荷物のおかげで座る位置が固定され、身動きが取れなかったことである。さすがに尻は痛かったが、自走ロングツーリングもいいものだ。

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